福岡地方裁判所 昭和45年(ワ)460号 判決
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〔判決理由〕
(1) 逸失利益
原告会社は、原告村中を稼働させて昭和四四年六月から同年九月までに金二、三〇〇、四六四円の利益をあげ得たにもかかわらず、同原告の本件事故による入院および前記後遺障害のため金一、六〇九、二六四円の利益しかあげられなかつたので、その差額金六九一、二〇〇円の利益を喪失した旨主張する。一般に企業の従業員のうちかけがえのないものが受傷した場合、それによる企業の営業損害を一概に否定することは必ずしもできないかもしれないが、それにしても本件において<証拠>によつて認め得るように、原告会社が従業員二四名を擁し、市内に四店の営業所を設けて電気製品の販売を目的とするものであつて、原告村中はそのうちの一店の店長を勤めるセールスマンであることから考えれば、原告会社の主張する逸失利益なるものが受傷した被害者本人たる原告村中の逸失利益と同視できるわけでもないので、両原告間に経済的に同一体とする関係があるということはできず、また被告らにも原告村中の受傷による原告会社の右のような事情を予見する可能性があつたと見ることのできるような証拠もない。結局原告会社は本件事故による間接被害者であるといわざるを得ないのであるが、だからといつて直ちにその損害を同原告の主張する範囲にまで及ぼすことは相当でないと考える。従つて、原告会社の賠償請求を否定すべきものといわざるを得ないが、仮りにこれが認められるとしても、原告村中の入院やその後の症状から考えて従前どおりの勤務ができなくなり、原告会社の営業に支障を及ぼしたことは容易に推測できるとはいえ、それによる実際の営業に影響した数額については、同原告主張のそれをそのまま採用することは困難であるといわざるを得ない。すなわち、<証拠>によれば、原告代表者は原告村中の売上減少として昭和四四年六月には割合額五〇〇万円に対して売上高金三、二〇五、〇〇〇円、達成率六〇パーセントで目標達成率八五パーセントとの差は二五パーセント、金一二五万円、同年七月には割当額金六四三万円に対して売上額金三、二〇五、〇〇〇円で達成率五〇パーセント、目標達成率との差三五パーセント、金額金二二五万円、同年八月には割当額金二〇〇万円に対して売上額金一、五七二、〇〇〇円、達成率七九パーセント、目標達成率との差六パーセント金額にして金一二万円、同年九月には割当額金三五〇万円、売上高金二二六万円、達成率六五パーセント、目標達成率との差二〇パーセント、金額にして金七〇万円、売上不足額の合計金四三二万円のうち荒利を一六パーセントとすると、その荒利金六九一、二〇〇円というのである。そして、右金額を算出するに至つたのは、<証拠>を綜合すると、原告会社は従業員二四名を擁して、春吉店、清水店、栗木店を有して電気器具の販売を目的としていたが、昭和四四年四月原店を開設して四名の従業員を置き、その店長には原告会社の優秀なセールスマンであつた原告村中を配し、同年四、五月には約三、五〇〇、〇〇〇円の売上があつたこと、そこでその後の販売予想としては原団地を控える附近の需要予測、競争相手等その他の要因を綜合し、季節変動指数で割り出したうえ、この売上目標(割当)額の達成率を同年四、五月の実績から八五パーセントとし、これと目標額に対する売上高の比率との差およびその金額を算出し、そのうち一六パーセントを荒利と見て、これが原告会社の損害であると算定したこと、原告村中は退院後原店に出勤したものの原団地の外交販売には階段の昇降を伴うので、その仕事には携わらなかつたこと、同年八月の目標額の設定には原告村中の申出により同原告の右のような事情を加味して定められたことを窺うことができるので、右事実から考えると、本件事故後と対比する基礎になつた原告会社原店の同年四、五月の実績の数額上の詳細を知ることはできないし、また原店四名の従業員の業務分担の変更によつて運営できる部分と原告村中の非代替的技術の占める割合等も明らかでない。そのうえ、目標額の設定、従つて達成率を八五パーセントと目論んだこと、原店の実績は従業員四名によるものであるが、それを同原告ひとりの実績の如く見ること等その合理性正確性について若干の疑問が残るのみならず、これを原告村中の受傷のみに基因するものと断ずるには通常変動を伴う他の諸要因を考えると、躊躇せざるを得ない。このことは同年八月の目標額について考えてみても、原告村中の事情を考慮してこれを定め、たしかに前月までに比べると低い数値に止めているが、それでもなお八五パーセントの目標率に達していないことからも明らかである。
(富田郁郎)